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また、よくもここまで頻繁に問題を起こしてくれるもんだ。何があったかを健吾に聞くよりも、成り行きを見た方が早い。そう判断して、俺はダイニングテーブルに腰を預けるようにもたれかかった。
今までのストレス発散方法は自己完結だった、けれど今回はついに他人に迷惑かけたって訳だ。健吾の『お前を信じる』発言を試したかっただとか、そんなところだろうが、それとこれとは状況が違う。
無音の空間に鳴るのはアナログ時計の秒針の音だけ。呼吸がしにくくてしょうがない。
いつから手癖が付いたのかは知らないが、きっと、俺達が勇希の異変に気が付くもっと、ずっと前からだったのだろう。
「お前、普通じゃないよ」
健吾も大概、限界が来ているんだろう。自分の手首を切りまくって、窓から飛び降りかけて、その上万引きで捕まりそうになってる奴が普通なわけが無い。
そんなの当たり前じゃん、と言った勇希の声は、久しぶりに聞いたせいか、俺が覚えているよりも少し低くなっていた。
俺と健吾が育ってきた環境と、勇希の今まではまるで別物だ。勇希の言い分は最もだと思うし、薄々そう感じているだろうとは思っていた。だから俺は何も言わなかった。
でも健吾は違う。勇希にしては思い切った発言だったがそれは、健吾にとっては捧げて来た自分の人生を一瞬で粉々にされたのと同じ事。
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