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健吾が蹴って割れた46V型の液晶テレビ。一人暮らしをする時が来たらかっぱらうつもりだったけど、もう使いものにならない。
戻ってきたのは健吾一人。人でも殺した後のような荒れぶりにため息をつく。
「すっきりしたかよ」
俺の問いかけに睨み返してきた。チンピラのような顔には、以前のような弟想いの兄の顔など微塵も感じない。昔から言うだろ、まとも気取ってる奴ほどキれたらヤバイって。
窓を開けたと思えば、ベランダで煙草を吸い始めた。なんだかな、俺は、お前の事も良くわかんねぇよ。健吾。
玄関の扉を開くと何もなかった。てっきりここに転がされてると思ってたが、その予想は半分当たりで半分外れていたらしい。点々と道を作ってる血は共同の非常階段の方へと向かっている。
「おっまえ、動くなよ」
近所に見られたら、とか、そういう問題はもう諦めた。さっきの騒音は隣や下にも聞こえていただろうし、最悪通報されている可能性もある。
俺が言ったのは、勇希の状況を見て、だ。嗚咽しているように呼吸も乱れ、散々蹴られた腹を抑えて唸っている。もう鼻血だかなんだかもわからないもので顔全体も汚れて、脂汗も涙も出て酷い有様だ。
「掴まれホラ、病院行くぞ」
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