モラル

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そんな折、爺さんが亡くなった。弟が爺さんの家で遊んだその日の夜中の事だった。弟は悲しみ、珍しく翔吾とくっついて寝ていた。翔吾も翔吾で、昔世話になった人の死を悲しんでいたんだろう。 弟が小学生になった頃、すっかり習慣づけられた残業や飲みに付き合い、帰りが遅くなる日が増えてきた。弟の世話があると告げ立ち去ろうにも、自分と縁のない理由は全て言い訳として処理され、こちらの事情など聞こうともせずに結局遅くまで帰れない。 酒の味を知ったのは会社の飲み会が初めてで、特に美味いとも感じない。ただ注がれた酒を飲み、注ぎ足され、飲む。まるで作業のようなものだった。  ある日帰宅しリビングに入ると、運動会の案内がテーブルの上に置かれていた。懐かしい記憶が蘇った。母さんと婆ちゃんが作ってくれた弁当を持って、父さんと本当の爺ちゃんがビデオカメラ片手に応援してくれた 翔吾と戦ったリレーや騎馬戦、好きな女の子と一緒に踊ったお遊戯。それらの思い出の一部の写真だけ、アルバムに残ってる。  手帳を開き日程を確認する。運動会は来月の第三土曜。仕事は休みだ。弟と翔吾に伝え、柄にもなく当日の弁当の練習をこっそりとしていた。  前日の金曜日、上司から明日の土曜に出勤するよう命令が下った。なんでも、近隣の高校の学園祭で使用する食材を毎年、このスーパーで納品しているという。     
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