モラル

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 小学校に入学した。数日経つと、僕と他の子達の差がさっそく見え始めた。友達、勉強と、僕が初めてだと感じること全て、周りの子達は慣れていて、焦った。幼稚園を出ていない僕は友達の作り方も知らない、書けるひらがなも不格好。大勢で食べるご飯も初めて。  自分達と僕があまりに違うのに気が付いた子達は、“友達になろう”という僕の声に”嫌だ“と言った。  何もかもが怖い。  学校が嫌いになった。  それでも楽しみな行事がここには沢山あった。いつもの勉強とは違って、昔お爺ちゃんと一緒にテレビで見たような、楽しいものだ。  “友達になろう”とめげずに掛けた声に“いいよ”と答えてくれた子が沢山いた事に自信がついて、少し小学校が楽しくなった。だから、初めての“友達”と一緒に何かをするのが楽しみだった。  だから、それが叶わなくなったときはショックだった。兄ちゃんの仕事が忙しいのはわかっているけど、約束したのに、と思った。本当はお爺ちゃんと三人で観に来て欲しかった。でもお爺ちゃんはもういない。でも兄ちゃん達が来てくれるならって、折角いっぱいお友達と練習したのに。運動だって頑張ったのに、って、思い始めると止まらなかった。  それから一年ごとにある行事には、あまり期待しないようにすることにした。学習発表会もバザーも運動会も、兄ちゃん達が都合がついた時に来てくれればいいと思うようになった。     
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