モラル

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この間のように眠ってしまわないように、でも初日に兄ちゃんが呼びに来たくらいの時間まで自分なりに暇を潰すことにした。 ただ少し寒い季節だったから、体調を崩しやすかった。家に帰るころには頭が熱くて、なんとなく怠かった。 学校で放課後、職員室に呼ばれることが増えた。原因は、僕が保護者宛のプリントや連絡を保護者である兄ちゃん達に伝えていない事。 何となく、兄ちゃんに伝えにくかった。怒りはしないけれど、僕が話しかけようとすると良かったはずの機嫌がみるみる悪くなって行くような気がした。 それでも保護者の目に止めなければならない情報だから、どうしたって伝えなければならない。兄に話しにくい、だなんて先生に言うことは出来ない。兄が多忙でプリントを読む暇がないと、事実半分、嘘半分をついても先生はわかってはくれなかった。 ある日、いよいよ痺れを切らした先生が、兄に直接会いに僕の家に来ると言い出した。 考えなくたってわかった。もし先生が家に来るようなことがあれば、怒られるのは僕だと。今まで隠していたプリントの事も、先生についた嘘も全部ばれて、今までよりももっと機嫌が悪くなる。 兄ちゃんは言葉では怒らなかった。でも、もの凄い音を立てて棚にぶつかった机に鼻の奥がツンとした。 怖い。     
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