モラル

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 耐えられないのは僕が弱いせいなのかわからないけれど、毎日気分が悪くて、なんにも楽しい事が考えられそうになかった。学校に行かなきゃいけないのに、行きたくなくなってた。  具合が悪い日が続いて、翔吾兄ちゃんに学校に連絡をして貰って休んだ。 寝ようとしても寝付けなくて、ボーっと見つめていた本棚には、僕の学校の教科書やおもちゃが入ってる。目に留まった一冊の絵本の背表紙をジッと見た。  何度も読んだから、絵や話の内容は覚えている。それに作中の歌のメロディーだけは、思い出そうとしなくても勝手に音となって頭の中に流れる。健吾兄ちゃんと翔吾兄ちゃんが勝手に作った音程で、よく歌ってくれてた。  あの頃は凄く、楽しかった。兄ちゃん達との今の生活が嫌なわけじゃない。でも、お爺ちゃんが生きていてくれたらって思ってしまう。     辛い事が続いて起こるようになった。他の人からすれば大したことじゃないのかもしれないけれど、どうする事も出来ないくらいに辛い。 健吾兄ちゃんは、僕の事が嫌いなんだ。どうしてもそう思えてしまう。僕が何をしても不機嫌な顔をしているし、この間は怒鳴られた。酔って辛そうだった兄ちゃんに水を渡そうとしたらコップを払いのけられ、“余計な事すんな”“どっか行けよ”と言われた。     
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