4人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
学校で急に具合が悪くなった。算数の時間で特に立っていたわけじゃないけれど、急に眼が回って、気持ち悪くなった。
暫くは我慢していたけれど、いよいよ横になりくなった。先生に付き添われて横になった保健室で、貧血だと言われた。
家庭の事情を知る担任の先生は、兄ちゃんに連絡して迎えに来るよう伝えると言ってきた。ぐらつく頭を必死に起こして、それだけは辞めるように頼み込んだ。先生はいつまでもわかってくれない。どうして兄ちゃんの逆鱗に触れるようなことをしようとするのだろう。わかっててわざとなのだとしたら僕はもう、この大人を信用できない。
あまり長居すると痺れを切らされて勝手に兄ちゃんに連絡されると思った。数十分休んで体調は回復したと嘘を付き、何度も倒れそうになりながら帰り道を歩いた。
家に着いた記憶も無ければ布団に入つた覚えも無い。けれど、耳に届いた声に意識は浮上した。
優しくて、一瞬誰の声かわからなかったけれど、健吾兄ちゃんの声だった。具合は少し楽になってはいたけれどまだ、気持ちが悪い。胃が空っぽで、分泌する胃液も無い気がする。
健吾兄ちゃんが部屋から出て行って、緊張が一気に解れた。また静かになった部屋に目を閉じた。けれど、リビングから聞こえる音がやけに大きく感じて、もう一度寝ようにも眠れなくなった。
最初のコメントを投稿しよう!