モラル

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僕が自慰行為をしてるのを見て、泣いているのを見て、それを写真に撮って、現像した写真を見て、それが黒板一面に張られてるのを見て、それを見る本人を見て、自殺未遂の現場を見て、 何が楽しいんだよ。 何を一方的に話してるのか、全く聞こえない。話すスピードが速いのか、僕の出来の悪い頭の回転が遅いの変わらないけど、なにも理解できない。する気も無い。  “辛かったわね”と、目を覗き込んでそう語りかけて来た。うん、辛い。辛かったじゃない、今も辛い。解るはずないんだよ、何も知らない人たちなんかに。  だからそういう事も平気で出来る。どういうつもりなんだ。翔吾兄ちゃんならまだしも、健吾兄ちゃんに見せるなんて。  今まで隠してきたつもりも無ければ見せつける気も無かった。でも知られたら、何かを言われるのは目に見えていたから、健吾兄ちゃんに見つかる前に辞めなきゃと思っていた。でも辞めれなかった。その繰り返しの、汚い痕を、僕の許可も無く兄ちゃんの前に曝け出した。 なんだよその得意げな顔。僕が自傷行為してるなんて、わかってましたよって顔。 嫌い。  顔色が一気に変わった健吾兄ちゃんに、女の人を思い切り睨みつけた。ほら見なよ。なんてことをしてくれたんだ。いったい誰の為だと思ってこんなことをしたんだ。僕は知られたいとも思ってなかった。健吾兄ちゃんが知る必要なんてなかったのに。     
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