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上辺の言葉だとわかっているけれど、本当に僕の味方で居てくれるのか、僕の話を聞いてくれるのか、知りたかった。
でも、そんなの結局は嘘っぱち。店の事務所で僕を一目見た瞬間に頬に感じた拳は怒りに震え、帰りに僕を車に押し込んだ力は、味方どころか僕を人間とさえ思っていなかった。
兄ちゃんを試した罰だ。さっさと諦めていれば、こんな厄介なことにならなかったのに。ダイニングテーブルによ寄りかかっている翔吾兄ちゃんと目が合った時、僕と全く同じことを思っている事がわかった。
翔吾兄ちゃんはいつもどこかで冷静に、僕たちを見ていた。今こういう状況になる事も、おおよそ想像していたのかもしれない。
また、健吾兄ちゃんが形だけの質問を始めた。何故万引きをしたのか。兄ちゃんの言葉を試したかったからなんて言えるはずもない。言ったら最後、何度も組み替えているその拳で殴られる。
未だに痛む頬を感じながら黙っていた。何をどう返せばいいのか考えていたのだけれど、その時間すら惜しいのか、途中に言葉をはさんできて思考を止められる。
普通じゃない。その言葉には少し苛立った。万引きの事だけを言ってるんじゃない。僕の全てを否定した言い方だった。
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