モラル

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涙が零れた。二人にとって、大事な弟で居たいだなんて呑気に思ってた事が恥ずかしくて、馬鹿らしくて。 最期の抵抗にと、力の入らない拳を兄ちゃんに向けた。こんな、赤子の手よりも弱いもの、何の役にも立たない。小さかった僕の手を、兄ちゃんはどうやって受け止めてくれたんだろう。 最初から、こうやって骨が軋むまで力を込めてくれていれば、お互い違う人生があったかもしれない。 優しい健吾兄ちゃん。兄ちゃんを恨んだ事はある、でも、最後まで嫌いになれなかった。だって、翔吾兄ちゃんも健吾兄ちゃんも、僕の大事な兄ちゃんだから。  ゴン、という音が心地いい。常にある脳を締め上げるような痛みが、その一瞬だけ無くなるから。  ずっと頭が痛い。病んで、発狂したくなる程に痛い。けれど、発狂したってどうにもならないのはもうわかった。  部屋に散乱した紙のようなもの。これがなんだったかは思い出せない。部屋に送り込まれてその日に壊してしまったから。  ゴン、ゴン、ゴン、ドッ、 何度も叩きつける度、頭が楽になる。生暖かいものがこめかみをゆっくりと伝っていく。     
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