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それ以来、彼女を連れてくると伝えると、例えそれが何時だろうと、どんな天気だろうと、何も言わずに玄関から出ていくようになった。恐らくいつもの場所で暇をつぶしているのだろう。
迎えにいったのは初日だけで、後はずっと、二十二時ごろに帰ってくるようになった。強要したわけじゃないけれど、弟なりに考えてくれたんだろうと好都合に考えた。
「遅かったな」
帰宅した弟にそう声を掛けた。けれど返ってくるリアクションもなければ、“ただいま”の一言もない。最近こういう事が続いた。最近外に出す頻度が高いせいかとも思ったが、そんな事でいちいち機嫌が悪くなられても困る。
一つ、心当たりがあった。この頃には弟は小学四年生になっていたが、友達一人の話も出て来ない。元々内気だったこともあるのだろうけれど、あまり楽しい学校生活を送れていないようだった。
帰宅したのは、二十三時頃。酒の回った頭は、何かを考えようとする意思を削ぎ落としてくる。暗い廊下を進み、リビングの照明のスイッチを押す。でも、煌々と灯ったのはダイニングテーブルの照明。どうやら相当酔いが回ってるらしい。
ダイニングテーブルに置かれている一枚の紙に目が止まった。『三者面談のお知らせ』と書かれたA4サイズの用紙はの学校からのものだろう。タイトルを見るだけでもう、頭の中で結論は出ていた。
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