序章~勇者の詩~

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「お兄ちゃん!またあのお話を聞かせて!」 子供たちが旅人の青年に駆け寄った。 「ふふ、もちろんさ!お子様たちは何のお話が聞きたいのかな?」 青年は優しく子供たちに聞いた。すると、子供たちが答えた。 「七つの大罪と勇者のお話!」 青年は驚き、子供たちにこう聞いた。 「あれは、悲しいお話だろ?そんなものが聞きたいの?」 「確かに悲しいお話だけど、それと同じくらいみんなが生きたお話なの!カッコよくて、素敵なお話なの!」 子供たちが反論した。それを聞いた青年は穏やかに微笑み、静かに語りだした。支配された世界と抗った者たちの生き様を。 かつて、世界を支配していたのは魔王だった。戦が絶えず、世界は苦しみに満ちていた。その中で必死に生きようとする民を魔王は嘲りながら日々を過ごした。 当然、この支配に抗う者たちは存在した。しかし彼らは魔王に敗れ、監獄に封印された。 始まりの騎士は嫉妬の監獄へ 二面性の義賊は悪食の監獄へ 三世界を知る戦術家は強欲の監獄へ 四世紀の愛を詠う魔導師は色欲の監獄へ 五国を治めた王は傲慢の監獄へ 六道を信じた僧侶は怠惰の監獄へ 七戦を生きた団長は憤怒の監獄へ 八度死を見る勇者は… 勇者は罪の監獄へ封印されることは無かった。否、封印される前に逃げ出すことが出来たのだ。なぜなら、彼は七つの大罪の封印を解くことが出来たから。勇者は七つの大罪と共に魔王の元へと進む。奪われたものを取り返すために。 しかし、進めば気づいてしまうだろう。この世界がパラドックスであると。
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