金髪の少女

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チェコスロバキアと名のつくものにはなんでも飛びつき、テレビ、雑誌、写真、地図……どこかにイトカの面影を追い続けていた。 スメタナやドボルザークの曲も聴くようになった。 チェコ語を習いたいと思ったが、どこにも教えてくれるところがなかったので、ロシア語を教育テレビやラジオ講座で学んだ(もっとも、これは勇み足で、チェコ人は歴史的経緯からロシア語を良く思っていないと後になって知ることになる)。 まだインターネットもない時代のこと、わずかな写真や映像でも、チェコスロバキアのことを知ることができるだけで嬉しかった。 あまりに僕が、チェコ、チェコと騒いでいるので、友人から社会主義者になったのかと心配されたくらいだった。 それから10年ほど経って、ついに僕はチェコを訪れるという夢を叶えた。初めての海外旅行の行き先に僕はチェコを選んだ。 社会主義体制が終わったチェコは日本からも自由に行きやすい国となっていた。 まだ社会主義体制が崩壊して間もない頃だったので、インフラの整備や治安には若干不安を感じることはあったけれど、それでも、僕はチェコという国についに辿りついたことに興奮していた。 ドイツのミュンヘンから夜行列車に乗ってチェコに入った。朝日で目覚めたとき、列車の窓から見えた陽光に照らされる美しい古城の姿は今も忘れられない。     
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