金髪の少女

3/3
前へ
/3ページ
次へ
一緒に行った友人には黙っていたが、プラハ城、カレル橋、旧市街広場など、僕はプラハの名所を歩きながら、どこかにイトカがいないかと、顔も覚えていない幻の少女像を探していた。 彼女がプラハ市民なのかどうかもわからないのに、この街を彼女も歩いていたのだと思うと、それだけで感動していた。 わずか二日間の滞在に過ぎなかったが、僕は人生の目標をひとつ達成した気分になっていた。 時は過ぎて、情報化社会になり、インターネットでなんでも調べられる時代となった。 僕が中学のときに偶然見た番組は「鐘のひびき」というドラマで、当時、「映像の魔術師」と呼ばれ、外国の賞を多数獲得していた公共放送の敏腕プロデューサーが制作したものだとわかった。 そして、イトカのフルネームがイトカ・ハラコーヴァであるということも知った。 しつこく検索したが、彼女の画像はどこにもなかった。DVDなども販売されておらず、再放送でもない限り、彼女の姿を再び見ることはできないようだ。 けれど、それもまたいいのかもしれない。 初恋の相手に同窓会で出会ってガッカリするように、僕はイトカの姿を見るのを怖いと思う心をどこかに持っている。 僕が再び姿を見たいのは、あのとき、あの時代、自分がテレビの中で見た幻の少女。 僕が勝手に想像を膨らませた少女ではない。 永遠に僕の中で理想の女性像として輝いていてほしい。そして、僕はずっとその姿を探し求めるのだ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加