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一緒に行った友人には黙っていたが、プラハ城、カレル橋、旧市街広場など、僕はプラハの名所を歩きながら、どこかにイトカがいないかと、顔も覚えていない幻の少女像を探していた。
彼女がプラハ市民なのかどうかもわからないのに、この街を彼女も歩いていたのだと思うと、それだけで感動していた。
わずか二日間の滞在に過ぎなかったが、僕は人生の目標をひとつ達成した気分になっていた。
時は過ぎて、情報化社会になり、インターネットでなんでも調べられる時代となった。
僕が中学のときに偶然見た番組は「鐘のひびき」というドラマで、当時、「映像の魔術師」と呼ばれ、外国の賞を多数獲得していた公共放送の敏腕プロデューサーが制作したものだとわかった。
そして、イトカのフルネームがイトカ・ハラコーヴァであるということも知った。
しつこく検索したが、彼女の画像はどこにもなかった。DVDなども販売されておらず、再放送でもない限り、彼女の姿を再び見ることはできないようだ。
けれど、それもまたいいのかもしれない。
初恋の相手に同窓会で出会ってガッカリするように、僕はイトカの姿を見るのを怖いと思う心をどこかに持っている。
僕が再び姿を見たいのは、あのとき、あの時代、自分がテレビの中で見た幻の少女。
僕が勝手に想像を膨らませた少女ではない。
永遠に僕の中で理想の女性像として輝いていてほしい。そして、僕はずっとその姿を探し求めるのだ。
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