記憶をなくした大罪人

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 そもそもシナーという名自体、本名なのかどうかわからない。彼は気づいたらそう呼ばれていて、罪人として追われていた。  右も左もわからなかったとき、たまたま窮地を救ってくれたのがリアンスだった。彼は理由は不明だがシナーを気に入ったと言い、その縁で今もこうして旅を続けている。  今まで会った人は、誰もシナーがどんな罪を犯したのか教えてくれなかった。わざわざ教えるなんて、もうそんな必要もないくらいに彼は極悪非道の罪人らしい。  そうやって誰も伝えてこなかったのか、リアンスのように、シナーが「大罪人」であるとは知っていても、その「大罪」が何かよく知らないという者もいた。最早その名だけでも恐怖を覚えさせる怪物のような扱いだ。  シナー自身にも、しばらく言われ続けたせいかもしれないが、自分は何か過去に罪を犯したという意識がぼんやりとある。だからこそ、彼はこうして記憶を探す旅に出たのだ。  しかし敏感なところだと油断して一瞬顔を見られただけでもさっきのように追われる。聞いてみようにも大体怯えるか武器を振り回すかされるので、まともな話にすらならなかった。 シナーは自分が誰なのか、何を犯したのか、それを知りたかった。  しかし一年経った今も、ほとんど進展はないと言っていい。
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