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「――本当にこっちでいいの?」
「多分……いや、あの屋敷にあった地図だからな。もしかしたらいろいろ変わってるかも」
「頼りないなぁ、もう」
あの屋敷を出てから数時間、二人は歩き続けていた。
さっきからこの道は二人以外に誰も通っていないため、帽子とマフラーによるシナーの変装は不要であった。
古ぼけた地図を広げて、日に透かしたり埃を払ったりしているリアンス。彼が言うには、というか地図には、北に進むと町があると書いてあったそうだ。
「何か、あるといいね」
「……そうだな」
シナーは未だ、記憶を呼び起こすきっかけすら掴めずにいる。
ほんの少しだけでもいい。記憶を取り戻せることを期待して、二人はさらに歩いた。
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