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医師と怪物
地図は間違っていなかった。
「廃墟だな」
「うん」
一応町ではあったのだろう、ひび割れだらけの舗装道らしきものはある。
長年雨風に晒され風化した建物、伸び放題になっている雑草、枯れた木々。辞書で引いたら出てきそうな、模範的な「廃墟」があった。ものによっては柱が腐ったりしたのか、倒壊した建物の瓦礫も多くある。
人はいそうにない。彼らからすれば、それは少し心の平穏でもある。
「とりあえずどっか泊まれるとこ探そうぜ。その辺の家とかどうよ」
あの屋敷を出るときはちょうど日が上がるころだったが、今はもう沈みかけている。
「うん。沢山あるから、宿には困らなさそうだね」
行った先の町では、資料を調べたり町の様子を見たりといったことをする。人目を忍びつつこっそり図書館などで調べるのがよくあるパターンだったが、この様子ならそれは必要なさそうだった。
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