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「お邪魔しまーす……」
そっと古ぼけた木の扉を開け、中を覗き込むシナー。
「お前そういうとこ律義だよな」
罪人なのに、とリアンスはそれに構わずにずかずかと上がり込んでいく。
二人が目を付けたのは、そこまで傷んでもいない二階建ての民家だった。
「大丈夫? 誰もいない?」
「ああ、しばらく使われてねーみたいだ。ラッキーだな」
二人で扉を次々に開けていく。とりあえず、まずは休める部屋を探したかった。
「あっ」
シナーが声を上げる。耳聡く聞きつけたリアンスが素早く駆けつけて来た。
「リアンス、ベッドあるよ! 二段のやつ!」
「お、いいじゃん! ここも当たりだな」
この部屋には二段ベッドと机が二つあった。子供部屋だったのかもしれない。
この前の屋敷はなかなかいい家具が揃っていたし、そもそも追われる身である彼らにとってはこうして家の中で暮らせるというだけでもありがたい。
「他の部屋も……と言いたいとこだけど、疲れたし、もうご飯食べて寝ない?」
「だな。俺が上で寝るからな」
「え、僕も上がいい! ちょっとリアンス、ずるいよ!」
早い者勝ちなんだよ、と梯子を上りながら舌を出すリアンスに抗議するシナー。
とても一日前追われていた少年とは思えない、無邪気な様子だった。
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