第一話:赤い糸

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 先着していた特殊部隊が応急処置を行っており、僕たちの仕事は混乱する現場を管理することにあった。もちろん、僕たち天使の姿は人間には見えない。 「被害の状況は?」  「かなり酷いです。影響は数百人に、下手すれば千人単位に及びます」 「そんなに」 「犯人は?」 「公安がマークしていた人物なんですが・・・・・・」  事件が起こったのは、あの少年が入った駅ビルの四階だった。そこで悪魔に唆された青年が、殺傷事件を引き起こしたのだ。その直接的な被害者はたった一人だが、そのことで連鎖的に解れ、裁たれてしまった糸が無数に生じた。  それらを繋ぎ合わせる作業の合間に取り押さえられた犯人を見ると、駆けつけた公安によって悪魔が引き剥がされているところだった。僕たちよりも面構えがよく、魅力的な雰囲気だ。 「これもまた運命なのかね」 「どうした?」 「見ろよ」  悪魔の姿に気を取られていた僕に声をかけてきたミカの視線の先には、先ほどの少年が白い表情をして眠っていた。  混乱は当初の予想以上に続いていた。応急的に繋がれた糸を正常な関係に結び直す仕事が僕たちを待っており、その行程を調整が二人の重要な仕事だった。  実際に作業を進めるのは、僕たちの部下で、人間界で活動する為の実物的な身体が用意されていた。その中に入った僕たちは、人間たちに紛れて生活していた。 「身体が重い」     
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