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一番人気は厚生労働省の恋愛庁だ。人間たちの言う恋のキューピッドに扮した職員は、彼らの色恋沙汰に多少のドラマを巻き起こし、赤い糸の繋がりを劇的に演出している。二番人気の財務省では、まさに金運を操作して、三番人気の警察庁は、運命の糸を悪戯に絡ませてエラーを起こす悪魔たちを取り締まっている。
総務省が割り振ったパラメータを基に、各省庁は動いているのだが、カラフルに繋がれた運命の色糸たちは互いに相互作用し合い、子猫に遊ばれた毛糸のように複雑に絡み合った結果、人間模様に不要なエラーを生じさせることがしばしばだ。
操り人形から延びた糸が、他の人形のそれと絡まってしまった状態をイメージしてもらえばわかりやすいだろう。運命の相手と結ばれたのに、宝くじが当たったのに、一向に幸せになれないのが、これらの具体的な事例だ。
その人間模様の変化を観察するは、環境省の仕事だ。彼らによってバランスの調整が必要だと判断された場合、僕たち医療スタッフと呼ばれるメンバーが、その復旧作業にあたっている。
その中でも特に、悪魔たちに起因するエラーの早急な修復にあたっているのが、僕たち救急運命裁縫室の主な仕事である。
「おい、見てみろよ」
「どうしたの?」
隣でレンズを覗いていたミカエルが、珍しく真剣な表情で声を上げた。差し出されたレンズを覗くと、一人の少年の姿が目に入る。
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