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「来るぞ!」
「3、2、っておいおい!!」
あろう事か、運命の相手と遭遇する寸前、彼は人一人が横歩きでようやく通れるほどの狭い路地に入り込んでしまった。歩道から見れば、まるで彼が壁に挟まっているように見えるだろう。しかし少年は、制服が汚れるのも気にせず、身体をねじ込んでは、必死に手を伸ばしているようだ。
「あれ? 何してんの・・・・・・」
「何か探してるみたいだな」
「いずれにしても、僕の勝ち、だよね?」
嬉々と声を上げる僕に、ミカが自慢気に答えた。通行人たちは、そんな彼を見て見ぬふりして彼の横を歩いている。
「いいや、確かに少年は、運命の相手と出会ったよ」
「いやいや、誰も居なかったじゃないか」
「ほんとに誰も居なかったか?」
「もしかして・・・・・・」
双眼鏡を操作した僕は、運命の色糸を見るモードに切り替えた。すると、彼の小指から伸びていた赤い糸は、ようやく路地裏から身体を抜き出した少年の右手の中にいる白黒模様の猫に繋がっていた。どうやら、路地裏で動けなくなっていた子猫を助けたようだ。
「綺麗な猫だよなー」
「もしかして掛け間違い?」
「いいや、正しい」
「そんな・・・・・・」
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