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影響は殆どないが、やはり、偉大な功績を残した人物の糸を継承した人間は、他の人よりも優れた人生を送る可能性が高いらしい。
「どんな人見てたの?」
「この少年なんだけど」
ミカから説明を受けたルカは、自分の双眼鏡を取り出すと、駅ビルの中に消えた少年の後を追った。
「可愛い子ね。彼がどうかしたの?」
「運命の糸が野良猫に結ばれてたんだよ」
「あらら、それで?」
「困っていたのを助けたけど・・・・・・」
路地裏で動けなくなっていた子猫は、地面に下ろされた瞬間、一目散に逃げてしまった。
「逃げられなかったら、どうなってたんだろう?」
僕の質問に、オペラグラスを操作していたミカが自嘲的な声をこぼした。
「ははは、なるほどねー」
「どうした?」
「あの猫を切掛けに、後ろを歩いていた女の子と仲良くなれたかもしれない」
「あちゃー」
どうやら、その猫はまた他の人とも繋がっていたらしい。彼から逃れた子猫は、彼の後ろを歩いていたその少女の足下にいた。汚れた体を振るわせて見上げている姿に、一瞬で心を奪われた彼女は、子猫をそっと胸に抱き上げると来た道を戻っていった。
「惜しいね・・・・・・」
「神様の思い通りには、そう簡単にいかないってことだな」
この少年のように、運命の相手と何かを介して繋がっている事もよくあって、見逃さない人の方が珍しい。
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