タバコと過ごす三日月の夜

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タバコと過ごす三日月の夜

長い一日が終わった こんなにも気持ちがマーブルのように曲がりくねり混ざらないようなことってあっただろうか… 感情が入り乱れた それらの気持ちに答えを出したくても頭の中がドロドロして何も浮かばない ベランダに出た 空を見上げると三日月 椅子に座ってタバコに手を伸ばした 人生で吸う最後の、タバコ。 長い時間共に過ごして来たお気に入りの銀のマルボロ。 もう二度と吸うことはないであろう相棒に火を付けて、ゆっくりと吸い込む。 …………美味しい。しみじみ。 改めて病気と向き合う。 死を身近に感じさせる場所の病気のせいか 人生とか今までとかこれから、が頭を占めた。 そして、娘の事。 旦那……どうしようもなさすぎてひとまず置いておこう。 タバコがおいしい。 もう一本。 死に近づく一本が名残惜しく、吸わずにはいられなかった。 ワタシという人生。 母親としての私。 妻としての私。 人生には終わりがあって、その日は前もって発表されるものではない。 余命が決まる病気ではないけど、もし何かあったら命の保証がない病気だ これから、どう生きよう。 考えても考えても答えはもちろん出ることなく まずは無事に手術、それだけか。 最後の一呼吸を味わうように吸い込み、 フーっと吐き出した。 相棒の銀マルをゴミ箱に投げ、私の喫煙人生は終わりを告げた。
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