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センチメンタル前日
手術前日
いよいよ入院の日。
娘、あずの情緒が不安定。
何度もゆっくり話しをしてきたけど、
理解をしろ、というのが無理な話。
しばらく離れる母親を笑顔で送り出せなんて残酷すぎる。
元気になってみたり、寂しい顔をしたり、あずはちいちゃい心で自分なりに折り合いをつけようとしているようだった。
胸が痛んだ。
いっぱい抱きしめた。
もしかしたら、ひょっとしたら何かの手違いで二度と会えなくなるかもしれない娘の感触を覚えておくために。
「はは?痛いよ〜!ぎゅって痛い。」
あぁ…感傷的になりすぎてこちらが不安定だ。
あずの「はは〜」がまた聞けますように、
この病気の先輩である私の「はは」に手を合わせ強く願って家を出た。
病院に着いた。
病室に案内され、説明を一通り受けて準備は終了。
旦那はというと、日常の中で生活をしているようだ。その温度に少しだけ切なさが残った。
「あず、入院中はどうするの?」
「あー、俺一人では世話できないから実家で
しばらく暮らすよ。俺も戻る。仕事も実家から行けば俺、家事しなくていいし。」
予想はしていた答えだった。
自分も帰るとは…まぁ、うちの実家で暮らしてるから一人で家にいるのも気まずいのは分かる。家事も嫌いだし。
一番ベストな選択でもある。
「そう。それがいいかもね。お義母さんも一緒に過ごせて嬉しいだろうしね。」
「何かあったら連れて帰ってくるし。大丈夫だから、こちらの事は心配しないで。」
「ありがと。頑張ってくるわ」
「……私にもしものことがあったら、あずの事、お願いね。」
「………もしものこと…?……あー…あった時に考えればいいから、そこは気にせずに。」
優しいのか、無神経なのか、どうしてもこのごに及んでも読めない。
いつもよりも「はは〜」と呼ぶあず。
苦しいことが多すぎて胸が詰まる。
あぁ、神様…私のはは…この子の為に
生きて返して下さい。
不安と寂しさと感傷にどっぷり使っている
私に優しい声で問いかけがあった。
「すいません、スズキユウノさんですか??」
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