339人が本棚に入れています
本棚に追加
南下する新幹線の車窓に、冠雪の富士が見えて来た。
グリーン車の窓側の席でノートパソコンを開き仕事をしていた貴臣はふと、今朝早くに電話を寄越した滉の言葉を思い出した。
『俺は短気なんだよ。兄貴から話を聞くまでなんて待ってられねえ! 自分の手で真実を炙り出してやる』
一気に捲し立てた滉は最後に言った。
『香月の家はどうかしている!』
貴臣はクッと笑った。
あの家は、どうかしているなんてレベルじゃないんだ。
昔から狂っていたんだよ、滉。
貴臣はパソコンを一旦閉じ、側に置いてあったホットコーヒーを手にするとシートに身を預けて目を閉じた。
神経を休めようとすると、否が応でも蘇る声と記憶があった。
最初のコメントを投稿しよう!