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「貴臣、何処にいるのー。出ていらっしゃーい」
リビングの外に据えられたウッドデッキの物陰に身を潜める十一歳の貴臣は、母の声を聞いていた。
いつからだろう。
母の呼ぶ声に全身鳥肌が立つようになったのは。
無意識に、身を隠すようになったのは。
所詮、直ぐに見つかるというのに。
貴臣は両手で耳を塞ぎ、目を閉じた。
落ち着け。
自らに言い聞かせ、気持ちを鎮める。
感情を殺し、嵐が過ぎるのを待てばいいんだ。
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