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「今日は珍しいね、公園だなんて」
「たまにはいいでしょこーゆーのんびりしたのも」
「まあね」
「何? またパンケーキでも食べたかった?」
「いや」
「もー素直じゃないなあ。すっかりディンも甘いもの大好きだもんね」
「まああんなの王家の食事じゃ出てこないからね」
「そうだよねえ。じゃあほらこの前の遊園地は? すっごい楽しそうだったじゃん。ジェットコースターなんて叫びまくってたよね」
「まあ」
「どう? また行きたい?」
「んー」
「ふふっ可愛いね」
「うざい」
「ははは。でも私はねー、こうやってディンとおしゃべりしてるだけでもすっごい幸せなんだあ。なんなら、ディンとはなかなか休み合わないからさ、会えるだけでとっても嬉しいんだよ、私は。ディンもそうでしょ?」
「どうだろうね」
「ははっ。いっつも無愛想で真面目な家臣様なのに、こうやって素直じゃないけどたまに可愛いところが好きなんだあ私」
「そうですか」
「そうなの! あ、そういえば来週からお姫様の旅のお供なんでしょ?」
「そうそう、大陸横断してボルヤルまで」
「そっかあ。じゃあ次はいつ会えるかな」
「いつだろうね。」
「また、すぐ会いたいね」
「......」
「ふふっ」
パンケーキも遊園地も公園でのお喋りも人を好きになるということすらも、私達には到底理解のし難いものばかりでした。
「ねえディン? ディンは私のこと好きになってくれた?」
「……わかんないよそんなの」
「ふふっ。またまたー」
それはディンにとっても同じなのだと思っていました。
しかし。
「くそっ血が止まらない!」
「もっとだもっと強く抑えろ!」
「やってるよ! 傷が深すぎるんだ! そうだ、お嬢様は?」
「大丈夫だミアナンデと安全な場所に避難した」
「良かった。畜生、あんな獣までいたのかこの森は!」
「はぁ……はぁ……」
「ディン! しっかりしろ! もういい、もう喋るな!」
「はぁ……はぁ……」
しかし、彼が死の際に繰り返しつぶやいていた恋人の名を聞いて、彼女の努力はすでに実っていたことを知りました。
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