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「そ、そんなもの本当の友でも家族でもない!」
「本当のだと……? ははは面白いことを言うな。それが『真実』であると誰が決めるのだ? 例が多い方か? 平和な国家お得意の多数決というやつか? ならばこの国ではこの現状が『事実』であり『真実』だ! 現に貴様らが本当にフィクホンの王家だったとして、それは『真実』でありこの場においては『事実』ではない! 家族に至っては、現に血が繋がっているのだぞ? どう覆すというのだ!」
ミアナンデの顔が歪んでいくのが顔を見ずともわかりました。
「レッルンサが弱いから悪いのだ。彼らが友や家族などというくだらんものを信じたのが悪いのだ! だから裏切られる。だから弱い! どうやら我々を悪者にしたいようだが、弱い者が食われる、世の真理だとは思わんか? 自分の胃で溶けてゆく豚になぜいちいち思いを巡らせねばらなぬのだ。」
「姫様を連れて逃げろ、アット、リーアバ」
ついにミアナンデがその口からそう私達に告げました。
「見たところ貴様も隣にいる豚共をよく肥やしたようだな。はははそうだ、そいつらを撃ち殺せば貴様は逃してやろう! どうだ? そろそろ食らい時ではないか? きっと良い味が」
ドンッ
その兵士を撃ったのはアットでした。
「貴様ぁ!」
残りの兵士がアットに銃口を向けます。
ドドンッ
次の瞬間、地面に倒れたのはミアナンデでした。アットをかばい、その命を無残な姿で終えました。
「……逃げろ。リーアバ」
アットの目はすでに私を見ていませんでした。
「ああああああああ!!」
ドドドド
彼の叫び声と銃声を背に私は走りました。お嬢様を背に乗せて。走り続けました。
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