名も知らぬ君へ

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名も知らぬ君へ

『期待の新人作家、デビュー! あなたに届いてほしい、この物語……』  書店に足を踏み入れると、そんな煽り文句が目に飛び込んできた。  毎年のように新人作家が現れて消えていく。  天才、鬼才、空前絶後、衝撃のラスト……そんな言葉がいつも飛び交い「今年一番の感動作!」がいくつも生まれ、そのたびに人々は軽めの涙を流す。  この本も同じ道を辿るのかもしれない。  でも、それでもいい。  平積みにされた『期待の新人作家のデビュー作』を手に取った。  この本が果たすべき使命は、誰かの感動を誘うことでもないし、ましてや賞を獲ることでもなかった。 『名も知らぬ君へ』  この本はただの「君」への連絡手段で、ただの――そう、ただのラブレター。
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