スマートスピーカー

　ある日のこと。オカ研のメンバーを色めき立たせるネットニュースが飛び込んできた。

　それは「スマートスピーカーが唐突に笑い出す」という内容だった。ネットでは「夜中に女性の笑い声が突然聞こえて震え上がった」と報告する者が続出していた。

　それまでスマートスピーカーに興味のなかった井川くんは記事を読み、買うことを即決した。買わない理由などなかった。

　二日後に商品が届くと、さっそくデスクの隅に設置した。一方的に話しかけて楽しんでいられたのは数十分が限界だった。欲しいのは相手からのアプローチである。しかし待てど暮らせど押し黙ったまま。

「まあ、こんなもんだよな･･････」

　井川くんはスマートスピーカーで音楽を聞いてシングルライフを楽しむことにした。部屋の照明を連携させ、声で明かりを点灯させられる機器も一緒に購入したが、狭い部屋では利便性を感じることはできなかった。話しかけるだけでネットショッピングすることも可能だったが、使うことはないだろうなと思っていた。