スマートスピーカー

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 その年の夏。オカ研恒例の夏合宿が始まった。メンバー全員で心霊スポットを巡り、霊が出ることで知られている宿で疲れた体を癒やすという、二泊三日の小旅行だ。  夜になると、色あせた畳が敷き詰められた大広間に布団が並べられ、メンバーたちは怪談話で盛り上がっていた。この時、一つだけルールが設けられていた。スマホの電源を落とすことである。着信音が鳴ると興ざめするからだった。井川くんは素直に従っていた。 「ところでさ、井川の部屋は怪奇現象とか起きてないの?」先輩のKさんが話題を事故物件に切り替えた。 「今のところ残念ながら無いですね」井川くんは申し訳なさそうに答えた。 「ロフトで寝てる?」 「この時期は暑くて無理です。下にマットレスを敷いて寝てますね」 「上から覗き込まれるような感覚とかない?」 「無いですね。上で寝ている時にハシゴを誰かが上ってくる、ということも無いですし」 「そっか・・・・・・」Kさんは横になったまま、自分の枕に視線を落としていた。 「あの部屋で死んだ人の詳細を知っているんですか?」 「それがさ、お前の部屋だけまだ詳細が分かってないんだよ。他の部屋は霊が出た時に、先輩と後輩の証言が一致したりするんだけど、お前の部屋だけ謎なんだ」 「そうなんですか・・・・・・出たらすぐに報告します」
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