1人が本棚に入れています
本棚に追加
その年の夏。オカ研恒例の夏合宿が始まった。メンバー全員で心霊スポットを巡り、霊が出ることで知られている宿で疲れた体を癒やすという、二泊三日の小旅行だ。
夜になると、色あせた畳が敷き詰められた大広間に布団が並べられ、メンバーたちは怪談話で盛り上がっていた。この時、一つだけルールが設けられていた。スマホの電源を落とすことである。着信音が鳴ると興ざめするからだった。井川くんは素直に従っていた。
「ところでさ、井川の部屋は怪奇現象とか起きてないの?」先輩のKさんが話題を事故物件に切り替えた。
「今のところ残念ながら無いですね」井川くんは申し訳なさそうに答えた。
「ロフトで寝てる?」
「この時期は暑くて無理です。下にマットレスを敷いて寝てますね」
「上から覗き込まれるような感覚とかない?」
「無いですね。上で寝ている時にハシゴを誰かが上ってくる、ということも無いですし」
「そっか・・・・・・」Kさんは横になったまま、自分の枕に視線を落としていた。
「あの部屋で死んだ人の詳細を知っているんですか?」
「それがさ、お前の部屋だけまだ詳細が分かってないんだよ。他の部屋は霊が出た時に、先輩と後輩の証言が一致したりするんだけど、お前の部屋だけ謎なんだ」
「そうなんですか・・・・・・出たらすぐに報告します」
最初のコメントを投稿しよう!