スマートスピーカー

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 合宿が無事に終わり帰宅すると、郵便受けの中に宅配便の不在票が入っていた。  実家から何かが送られてきたのだろうかと思ったが、差出人の欄には通販サイトの名前が書かれていた。 「何も買った覚えないぞ・・・・・・」井川くんは合宿に出発する前の記憶を辿ったが、思い当たる節はない。  部屋の中に入ると、たった二日間空けていただけなのに、他人の部屋に来たかのような違和感があった。再配達の依頼をして待っていると、徐々にその違和感が補正され、馴染んでいくのが分かった。  荷物が届いたのは一時間後のことだった。井川くんはドアを開けた瞬間に息を呑んでいた。配達人は1メートル四方の巨大なダンボール箱と、小さな箱を玄関に運び入れたのである。 「なんですか、これ?」と訊ねるわけにはいかず、引きつった顔でサインした。  伝票を見ると、間違いなく自分が購入したものだった。いまさらキャンセルなんてできないよな。そう思いながら、どちらの箱から先に開けようか少しだけ迷っていたが、否応なく巨大な箱に目がいった。  恐る恐るテープを剥がし、中を覗き込むと、そこには木製の椅子が入っていた。背もたれは低く、肘掛けの無い、座り心地の悪そうな椅子である。  井川くんは首を傾げつつ、今度はもう一つの小さな箱を開けた。中に入っていたのは一本のロープだった。  井川くんはKさんに電話して状況を説明すると「すぐに行く!」と嬉しそうな声が返ってくるのだった。
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