スマートスピーカー

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 これは当時大学生だった井川くんが体験した話である。  井川くんは大学でオカルト研究会に所属するほどの生粋のオカルト好きである。  霊感は全く持ち合わせていないが、UFOは子供の頃に一度だけ目撃したことがあった。中学や高校の同級生たちは誰も信じてはくれなかったが、オカ研の仲間たちは目を輝かせながら話を聞いてくれた。UFOの型や窓の数を言い当て、さらにはどうやって調べたのか分からないが、UFOの定員数まで教えてくれるのだった。  オカ研は井川くんにとって、とても居心地の良い空間になっていたという。  そんなオカ研には伝統があった。大学を卒業する際は、先輩が過ごした部屋を後輩が借りるというものだった。なぜそんな面倒なことをするのかというと、いわゆる事故物件だからである。オカ研のメンバーは事故物件に住んで当たり前という掟があった。  井川くんは大学三年生になる時に、そんな理由で引っ越しを余儀なくされた。家賃は一万五千円で破格の安さだ。六畳の部屋だがロフトが付いているため天井が高く、狭くは感じなかった。過去にその部屋で何が起きたのかの説明は一切ないまま、粛々と引き渡しの儀式は行われた。
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