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動きがあったのは、それから一週間経ってからだった。また画像が送られてきたのである。
今度はスーツ姿の若い男性だった。前回同様に隠し撮りであり、男性はあらぬ方向に視線を送っていた。
松山さんは自分のiPhoneをビデオモードにし、周囲にいる乗客の顔をさりげなく撮影していた。満員状態であったため、対面のシートに座っている人の顔までは収められなかった。犯人は満員になるのを待っていたのかもしれないと思い、唇を噛みしめていた。
電車を降りると、ダメ元で交番に向かった。以前と同じ警察官がいたが、松山さんの顔を見ると露骨に嫌そうな顔をするのだった。
「どうかされましたか?」警察官は無愛想だった。
「次のターゲットになる男です」松山さんは画像を見せた。
「あのう・・・・・・前にも言いましたけど、私にどうしろというんですか? その写真の男性をこの街から見つけ出して保護しろとでも? もしくはあなたの乗っている車両を封鎖して、全員の身元を確認しろとでも? どちらも無理ですよ。FBIだって断りますよ」
「とりあえず覚えておいてください。この男性のことを」
「じゃあ、その画像を私の携帯に送信してください。Airdropでね」警察官はため息混じりに言った。終始投げやりな対応だったが、松山さんは少しだけ事態が前進しているような気がしていた。
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