Airdrop

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 数日後、iPhoneに送りつけられてきたのは、すでに殺された男性の画像だった。女性の時とは違い、二回目で殺害されていた。松山さんは悲鳴を上げそうになったが飲み込み、必死に冷静さを装った。心臓が激しく鼓動し、胸を内側から叩いていた。  男性は首から下だけを集中的に攻撃されていた。顔が無傷なのは、最初の画像と同一人物であることを自分に教えるためだろうと推測していた。 「ほらみろ! 殺されたぞ! あんたがすぐに動かないからだ!」松山さんは電車を降りると、いつもの交番に駆け込み、警察官に詰め寄っていた。  警察官は目を見開いて画像を凝視すると、周囲を気にしながら呟いた。 「一応私も調べたんですよ。もしもどこかで殺害されていたとしたら、連絡がつかなくなった家族が捜索願を出しているはずですからね。ですけど捜索願が出されている人々の顔を確認しても、あなたの持ってる画像の人は出てこなかったんです」 「じゃあ、これもフェイクだと言うんですか?」 「でしょうね。顔だけ無傷じゃないですか。それはホラー映画やネットから残酷な画像を持ってきて、顔だけをハメ込んだからですよ。色々な角度から何枚も隠し撮りして、偶然苦しそうな表情をしていた瞬間を切り取って使っているんでしょ」  松山さんは警察官の説明に妙に納得していた。言われてみれば確かにそのとおりだった。この平和な日本で表の世界を普通に生活している人が拉致されて殺害されれば、すぐにニュースになるはずである。  松山さんは興奮していたことが急に恥ずかしくなり、顔が赤くなっていた。警察官に一礼すると交番を飛び出した。
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