催眠

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「新興宗教の教祖にでもなるつもりなのか?」M氏は鼻で笑っていた。 「そんなものに興味はない。俺のやっている催眠は説教でも神の啓示でもない。ただの手助けなんだよ。本人の能力を引き出すだけなんだ。お前みたいな信じない人間には掛からないだろうけどな」 「予防線を張るなよ」 「催眠に掛からない方が不幸なことなんだぞ。人間の持つ能力をほとんど活かさないで死んでいくことになる」 「じゃあ訊くが、例えばどんな能力を活かせるんだ?」 「霊感なんてそうだ」 「霊感だって!?」M氏の笑い声は雑居ビルの廊下にまで響いていた。「じゃあ、俺に霊が見えるようにしてくれよ!」 「霊感は特別な能力ではない。誰もが持っている。使うか使わないかの違いだ。本気で自分から催眠に掛かろうとしてくれるならやってやるよ」 「そのつもりだ」M氏は催眠が終わったら、何も変化がないことをあざ笑うつもりだった。
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