0人が本棚に入れています
本棚に追加
「山本?俺の名前じゃないか。なんだ今更謝ったって許すもんか」
少女はにこりと笑った。俺が怒ってるのににこりと
笑ってたのだ。ちょっと不満かも
「でも、出所したら許しちゃうんだねーこれが。だって親友だもんね」
「許す理由何て無いのに許すもんかよ。絶対許さねえぞ」
その時、よっ とまた柵に登った。考えてみたら風が全く吹かなくなったみたいだ。不思議だ
「で、更生していい子になったらみんなからチヤホヤされる。だけど君は相手にしてもらえない。人間ってほんと面白いよね」
これまた不思議だ。あなたも人間では無いか。なぜそんな他の生物でも見るように
「だけどさ」
「そんな上辺だけの祝福喜ぶかな~」
祝福では無かった気がする。確かブラシーボ効果とか何とかだった様な
「ま、私にはどうだっていい事だけどさ。私にはね
」
くるっと振り向いた少女の顔は何故だか澄み切って
いた。と、同時に暖冬の夜の様な微妙な冷たさでも
ある
「だけど君はどうなの?」
……
「親友でしょ。会いたくない?久しぶりに」
「いや、絶対に会いたくない!だって犯罪者だぞ」
「出所したら?」
その問いにうっ……と口を噤んだ。確かに出所したら犯罪者では無くなる無くなるけど……っ
「あ、そろそろ私行かなくちゃ。じゃあね」
柵から身を投げだそうとした彼女に 「待って!」
と俺は引き止めた
「アイツに会ったら伝えといてくれ。"あの屋上で待ってる。勿論ぶん殴る。ぶん殴るが、それで僕達は元通りだ。待ってるから" と」
少女は「長すぎて待ってるの部分しか覚えらんない
」
と返したので、「それでもいい。俺は待つから」
と更に返したらにこりと少女は笑って、柵から姿を消した
何だったんだろう……と思いながら、その場を立ち去ろうとすると頬にふわりと風が吹いた。
そして、空から何か振って首にくるっと巻かれた
見ればそれは家に干していたマフラーだ。ふと、さっきの風を思い出して、少女の正体を
だいたい知ってしまうのだった
最初のコメントを投稿しよう!