ただ

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「山本?俺の名前じゃないか。なんだ今更謝ったって許すもんか」 少女はにこりと笑った。俺が怒ってるのににこりと 笑ってたのだ。ちょっと不満かも 「でも、出所したら許しちゃうんだねーこれが。だって親友だもんね」 「許す理由何て無いのに許すもんかよ。絶対許さねえぞ」 その時、よっ とまた柵に登った。考えてみたら風が全く吹かなくなったみたいだ。不思議だ 「で、更生していい子になったらみんなからチヤホヤされる。だけど君は相手にしてもらえない。人間ってほんと面白いよね」 これまた不思議だ。あなたも人間では無いか。なぜそんな他の生物でも見るように 「だけどさ」 「そんな上辺だけの祝福喜ぶかな~」 祝福では無かった気がする。確かブラシーボ効果とか何とかだった様な 「ま、私にはどうだっていい事だけどさ。私にはね 」 くるっと振り向いた少女の顔は何故だか澄み切って いた。と、同時に暖冬の夜の様な微妙な冷たさでも ある 「だけど君はどうなの?」 …… 「親友でしょ。会いたくない?久しぶりに」 「いや、絶対に会いたくない!だって犯罪者だぞ」 「出所したら?」 その問いにうっ……と口を噤んだ。確かに出所したら犯罪者では無くなる無くなるけど……っ 「あ、そろそろ私行かなくちゃ。じゃあね」 柵から身を投げだそうとした彼女に 「待って!」 と俺は引き止めた 「アイツに会ったら伝えといてくれ。"あの屋上で待ってる。勿論ぶん殴る。ぶん殴るが、それで僕達は元通りだ。待ってるから" と」 少女は「長すぎて待ってるの部分しか覚えらんない 」 と返したので、「それでもいい。俺は待つから」 と更に返したらにこりと少女は笑って、柵から姿を消した 何だったんだろう……と思いながら、その場を立ち去ろうとすると頬にふわりと風が吹いた。 そして、空から何か振って首にくるっと巻かれた 見ればそれは家に干していたマフラーだ。ふと、さっきの風を思い出して、少女の正体を だいたい知ってしまうのだった
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