ただ

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────意味も無く屋上に居るとこの世の人間を全員抱きしめて、殺して見たくなる そう、アイツは言っていた。 丁度、刑務所に入る280日前の事だ 忘れもしない。晴れた日だった そんな事を思い出すからこの屋上に来るのは嫌なんだ ああ、どうして詐欺なんてチンケな罪で捕まっちったのかな。アイツ 「この屋上からは死ねないよ。柵が高いからね」 ……誰だ 「ま、君は死なないね。目で分かるよ」 なんと……少女だ。柵の上に少女……? 「あ、あなたこそ危ないですよ。そんな所に……あっ」 案の定、少女は柵から前向きに落下してしまった。 だが、不思議な事に落ちた音がしない。何処にぶつかった音もしない。僕は遂に気になって柵から下を見た そこには少女が寝ていた。空中にである。 頭のパズルが正常に組めなくなる様な出来事だ。 少女は空中に寝ているのだ。確かに 「ねーびっくりした?」 少女は頭を上げ、身体を起こして、空中にぴんと立った。頭がもしかしたらと思っていても目に入るのはなんにもない空中だけだった 「何者……?」 背伸びをする少女に僕は目を開いたまま聞いた 「最後のお楽しみにしてー」 そう少女は返す。そして、まるで螺旋階段を登る様にとてとてと冴ゆ空気を登ってまた、柵まで戻ってきた 「でー」 「ここでなーにしてたの?」 手を組んでいる。姿は白いワンピースに青いヒールを履いている。髪がきらきらと日に当たって輝く 「ちょっと元親友の事を思い出してた。最後に話したのがここだったからさ」 「元?」 ぴょんと柵から降りて、二歩前に出た 「ああ、犯罪者の事を親友なんて呼びたくないさ。 屑だ。もうゴミ屑だよ。アイツは」 それを聞くと少女はむーっとした。その顔はまるで 冬の寒い日に家から出たら、道が凍ってた様な顔 「そこまで言わなくたっていいんじゃないの?大体その親友さんは何処の刑務所にいるの」 「波賀刑務所だよ。思い出したくも無い」 少女は指を口に当てる素振りで空を見上げた。僕も同じく空を見る。なんとも澄み切った冷たき空 「その人なら知ってる」 また背伸びをした。身体が柔らかいらしい。よく伸びる 「なんかね、ごめんねごめんねってよく言ってたよ 。色んな人の名前上げてたな~確か……唐住とか山本とか」
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