また一から

2/10
前へ
/228ページ
次へ
久遠くんはさっきから、こちらを見ようとしない。 こんなことはよくあることだから、私は気にせず彼の前の備え付けテーブルをおろしてあげ、さらにそこにお弁当を広げた。 「食べないの?」 「……食べる」 「久遠くん、なんか変じゃない?」 図星だったようで、彼はパキンと割り箸を割って、そのまま固まった。 「別に、何もねえよ」 「嘘だ。なんかいつもと違うよ」 移り変わる景色には背を向けて、私は久遠くんばかり覗き込んだ。その視線についに観念したらしく、彼はまくまくとお弁当を食べながらも、白状した。 「遠出なんかしたことねえから……分かんねえんだよ」 彼は顔を赤く染めた。
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2588人が本棚に入れています
本棚に追加