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久遠くんはさっきから、こちらを見ようとしない。
こんなことはよくあることだから、私は気にせず彼の前の備え付けテーブルをおろしてあげ、さらにそこにお弁当を広げた。
「食べないの?」
「……食べる」
「久遠くん、なんか変じゃない?」
図星だったようで、彼はパキンと割り箸を割って、そのまま固まった。
「別に、何もねえよ」
「嘘だ。なんかいつもと違うよ」
移り変わる景色には背を向けて、私は久遠くんばかり覗き込んだ。その視線についに観念したらしく、彼はまくまくとお弁当を食べながらも、白状した。
「遠出なんかしたことねえから……分かんねえんだよ」
彼は顔を赤く染めた。
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