また一から

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まったく言葉足らずだが、私は久遠くんは女性と遠出をしたことがないから緊張しているのだということが、これだけで理解できた。 経験豊富だと思っていた久遠くんの“初めて”を貰うことができて、私もつい頬が熱くなった。 「色んなところ行こうよ。お墓参りじゃなくても」 「……どこ?」 「そうだなあ、京都のお寺とか、博多のラーメンとか、北海道の雪まつりとか。あと温泉!ハワイもグアムもヨーロッパも、オーストラリアも行きたいかな」 「……多い」 「全部行けるよ。これから時間はたくさんあるんだから」 久遠くんはじっとこちらを見つめて、「それってどれくらい?」という顔をした。 彼はまだ、私がずっと一緒にいると約束したことを信じてくれていない。
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