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彼の大きな手は私の手からはみ出ているし、私の手を握り返してはいないけれど、久遠くんはこれで精一杯だとばかりに顔を逸らせてしまった。
「へへへ」
正直言えば、私の方は、付き合い始めてから今まで、彼にすっかり慣れてしまった。もともと彼ほどシャイではないし、もう自分の好意は素直に伝えることができる。
今ではいつまでも初々しい彼の反応が可愛くて、わざとこういうことを求めてしまうだけだ。
「何笑ってんだよ。バカにしてんのか」
「してないよ。幸せだなあ、って」
お墓参りに来たのに幸せに酔いしれるなんて、バカは私のほうだ。
でも、それが彼のお父さんに対して不義理に当たるとは思わなかった。きっとお父さんも望んでいたことだ。
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