また一から

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「だって、まだお父さんに報告してなかったでしょ?」 「……報告って」 「結婚相手を紹介するって、久遠くん、お父さんと約束してたじゃない。約束を守るためにずっと必死だったのに、忘れちゃったの?」 私は目を開けたけれど、立ち上がらず、そのまま手を合わせていた。 久遠くんが今どんな顔をしているかは想像がつく。 どうして黙ってしまったのかも分かってる。 「美和子、それって……」 「私は久遠くんのこと、一生捨てちゃ駄目なんでしょ? それってそういう意味だと思ってた」 私から言い出さなければ、きっと久遠くんは私をそばに置いたままずっと自信なんて持てないはずだ。それこそきっと十二年分拗らせた想いなら、あと十二年かかってもおかしくない。 私はそんなに待っていられない。私だって、久遠くんとずっと一緒にいる証が欲しいのだ。 「違うの?」 「……美和子、お前って何でそんな……バカだろ……」 「もう、バカって何よ」 素直な表情をするようになった彼を、もっとお父さんも見てほしい。 「美和子………そばにいてくれ。ずっと。ずっと好きだから」 私は彼を振り返って笑った。 暖かい風が、墓前を吹き抜けていった。 END
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