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十二年ぶりの再会
それはちょうど一年前の出来事だった。
私と“久遠くん”が十二年ぶりに再会を果たした日のあの静かな衝撃は、今でも忘れることができない。
私は大学を出て大手出版社に入社、純文学の担当になり、そこで七年も勤めていれば嫌でも一人前となっていた。
しばしば有名作家さんたちを担当することもあり、着実に、編集者としてのキャリアを積んでいた。
作家“久遠タカユキ”の噂を聞いたのはそのころだった。
うちの出版社では相当噂になっていた、新人賞をとったという二十代のイケメン作家。
名前だけを聞いたとき、同姓同名の可能性もあったのに、私は不思議と、真っ先にそれはあの“久遠くん” なんじゃないかと思った。
なぜなら作家という職業が、彼に一番合っていると思ったからだ。
そして偶然にも、私は“久遠タカユキ”の担当に決まった。
担当として彼のプロフィールを見て、高校名、大学名、すべてが一致していることを確認した。
私は彼との再会の日を控え、込み上げてくる期待と恐怖に怯えていた。
編集長が事前に電話でアポイントをとり、私が先生になった彼と初対面する、ついにその日。
このタワーマンションを目の前にしたとき、そこへ飲み込まれてしまうようだった。
こんなところに住んでいるなんて、あの彼はどんな風に成長したんだろう。
“久遠くん”に会える。
彼と過ごした高校時代はもう二度と掘り起こされることはないと思っていたのに、それが今、掘り起こされようとしている。
マンションに入る前に注意深く顔を作った。
決して高校時代のことを垂れ流したまま彼には会わないように。
冷静に、単調な敬語で、あのころとは違って、“久遠先生”と呼ぶのだ。
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