蹂躙・残党狩部隊本隊編・鉄槌

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静かなその声は周囲の喧騒に消える事無く大隊長達の鼓膜を抉り、大隊長達はその冷たい響きの声に背筋を凍らせながら上空に視線を向けた。 陣営の上空で淡い輝きを放つ血に塗れた様に赤く染まった月、その血塗れの月を背に巨大なドラゴンと蝙蝠の羽を大きく広げた妖艶な美女、魔王アイリスが空中に浮遊しており、大隊長達がその光景に絶句しているとアイリスは凄絶な笑みと共に歌う様に告げる。 「……そして、サヨウナラ」 歌う様に告げられたその宣言は絶対零度の冷気が宿っているかの様に冷たく、その冷たさに背筋を凍らせた大隊長は戦慄きながら迎撃を命令しようとしたがアイリスはそんな様子を無視してポツリと呟いた。 「ダーク・インフェルノ」 アイリスが呟くと同時にアイリスの前の虚空に4つの黒い焔の火球が発生し、発生した火球は一気に加速しながら眼下の司令部周辺に落下して大隊長とその周辺にいた魔導兵、弩砲兵、工兵の各中隊長を直撃してその身体を黒い焔で包み込んでしまう。 「……っぎあぁぁぁぁっ!!!」 「……っがあぁぁぁっ!!!」 「……っひっ……火が……火があぁぁぁぁっ!!!」 「……っひっがあぁぁっ……な、なんだこの焔は……け、消せんっ!?何故だ、何故消せっ……ぐぎあぁぁぁっ!!」 火球の標的となった大隊長と3人の中隊長は焔に包まれてのたうち回りながら身の毛も弥立つ様な絶叫を迸らせ、その光景を目の当たりにした周囲の者が凍りついた様に硬直する中、ドラゴン、フォレンストドラゴンがブレスを放った。 フォレンストドラゴンの放ったブレスは司令部前の広場に炸裂して焔にのたうち回る大隊長達を周囲の将兵共々に吹き飛ばし、アイリスはその様を見下ろしながら新たな言霊を紡ぐ。 「ダーク・アイスランス」 アイリスの紡いだ言霊に誘われる様に虚空から黒い氷柱が次々と生じて眼下に広がる陣営に向けて次々に落下して行き、氷柱の直撃を受けた将兵はその時の姿勢のまま氷に包まれて生きた氷像となった直後に砕け散り、無数のダイヤモンドダストとなって周囲に飛散してしまう。 その間にフォレンストドラゴンも周辺に次々にブレスを放ち続け、陣営はアイリスが無数に撃ち込む闇の氷柱とフォレンストドラゴンが放つ炎の濁流によって包み込まれてしまう。
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