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待てば待つほどに
財布よし、時計よし。身だしなみ……たぶん、よし。靴も昨日ピカピカに磨いたし、髪も跳ねてない。さっきちゃんとミントのガムも二個噛んだし、何の問題もないはずだ。
僕はスマホの画面をスクロールして、待ち合わせ場所がここで間違いないことをいま一度、確認しておく。あと十五分でカナコさんがやってくる。僕は自然に緩む口角を引き締め直して、すぐそこにある改札をじっと見つめた。
カナコさんっていうのは僕の大学時代の先輩で、一言で言うとたぶん「少し残念な美人」だと思う。いやひょっとしたら世間のみなさんは「かなり残念な美人」くらいに思っているかもしれない。
というのもあのひと、気が強くてわりとサバサバしてるんだけど、どうかしてるんじゃないかってレベルの食いしん坊なのだ。ただ食いしん坊なだけならそれはそれでいいんだろうけど、あのひとの場合いちいち本当に飯に厳しい。さすがに三十路を越えて結婚相手が見つからないことに焦りは感じているらしく、ここんところずうっと婚活とかいう集団見合いだか中年合コンだか知らないけどなんかそういうやつを繰り返しているにも関わらず、ほとんどの男性と飯が原因で破局している。
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