光源氏が呼んでいる

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 美由紀は学校の冬休みに入ったので市内の図書館に来ていた。  図書館までは自転車を漕いでいく、バスでも行けるけど学生はお金を無駄に使えない。片道三十分かかるが仕方がない。  本の虫の美由紀は小さい頃からこの図書館に来ては色々な物語の本を借りていく。種類は様々、推理小説もあればファンタジーも歴史物も読む。  夏休みには平家物語を読破したので今度は源氏物語に挑戦したかった。  本当は中学の時に読みたかったけれど、なんとなく大人の雰囲気がして近寄りがたかった。それで、高校生になったら読んでみようと思っていたのだ。  図書館の駐輪スペースに自転車を止めると、自動ドアを抜けて目当ての古典コーナーに向かう。そこに現代文で書かれた源氏物語があるのをあらかじめ知っていた。  全巻で十巻に及ぶ大作なだけに美由紀の心は踊った。  完全に活字中毒な美由紀は、読書離れ久しいこのご時世でもかなり珍しい部類だろう。 「あれ?」  目的の古文の源氏物語のところに着いた美由紀は違和感を感じた。 「一つ二つ……七つ八つ九つ」
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