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その洗練された真摯な姿勢に誰もが魅入った。
「お嬢さんのせいじゃないさ。変な客のせいだ。」
「気にしないでくれ、私達も平気さ。ありがとう。」
そして皆口々にウェイトレスへ笑顔を向けた。
「皆様…こちらこそ、誠にありがとうございます。」
そのおかげか無表情だった彼女はようやく笑顔を溢す。
「よかった…。」
「よかった。」
セシリアもホッと一息吐くと同時に言葉が重なった横の青年を見上げた。
「ははっ、被ったな。でも本当に良かった。あんたも凄いな。」
「え?私は何も…」
「いや、注意しようと席を立とうとしてただろ?俺も同じこと考えてたからさ。な、あんた名前は?」
どうやらセシリアの行動は好感が高かったようで青年の興味を引いたらしい。
「セシリアです。」
「俺はアレク。また会ったらよろしくな!」
そう言ってアレクという青年は元気に去って行った。
「セシル、本当に大丈夫?」
レイチェルに心配され頷くと雰囲気を変えるために努めて明るく振る舞った。
「ね、アレクって人、もしかしたらセシルに気があるんじゃない?」
彼女の揶揄うような言葉に、まさかあり得ませんよ!と手を振って否定する。
そうするうちに徐々に食堂は明るい雰囲気へと変わり、1時間30分ほどジョンソン夫妻と談笑をしつつハンバーグを食べていく。
最後は噂のデザート、プリンを完食しジョンソン夫妻とも別れた。
「あ、いつのまにか日が沈みましたね。」
そう言って食堂のドアを出ると、窓の外が見えた。
「あっと言う間だったわね。夫妻のお話も面白かったものね〜。」
2人で他愛ない話しながら廊下を歩いていると、セシリアは何処からか聞こえる泣き声に気づく。
「あれ、…こっちかな…」
「セシル?」
声のする方を辿ると3号車と4号車を繋ぐスペースがあり、そこに先程ぶつかった少女が座り込んでいた。
「どうしたの?」
「うっ、…うぅ。ウサギさんが居なくなっちゃったぁ…うぅヒック。」
振り返った少女の瞳から大粒の涙が溢れた。
「泣かないで、私も一緒に探しますから!」
「…うぅ…いいの?」
「うん!」
優しいセシリアの言葉に涙は止まり側に寄って彼女のワンピースの裾をちょこんと掴んだ。
「ちょ、セシル。ねぇ貴方お母さんはどこ?」
先々進もうとする彼女に慌ててレイチェルは制止する。
「ミーナ!ここに居たの?ごめんなさいね、うちのミーナがご迷惑をおかけしませんでしたか?」
「お母さん!あのねっお姉さんが一緒に探してくれるって!」
丁度母親が近くの部屋から出て来た。
「迷惑なんて事ないです!ミーナちゃん、何か無くされたようで。私は手が空いているので探すのを手伝います。」
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