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探しもの
「まあ。ありがとうございます…ぬいぐるみ、この子お気に入りみたいでして。あいにく私は小さい子がもう1人居まして…手が離せなくて…どうしようかと…」
彼女の言葉に、そういえば先程食堂でチラリと見かけた時に赤ちゃんくらいの幼い子を抱いて居たような…と思い出す。
セシリアはお任せくださいと笑顔で答えた。
念のため不安がらせないよう、身分証でもあるiDを見せてどの部屋に滞在しているかも伝える。
彼女も自分達は4号車に滞在しているとiDを見せ教えてくれた。
「夜遅くなってしまうと申し訳ないので、1時間ほどミーナちゃんと一緒に探しますね。」
「助かります。ミーナ、お姉さんを困らせちゃダメよ?ぬいぐるみだったらまた買ってあげるからね。」
「うん。でも、がんばって見つける!」
お母さんは困っているみたいだが、その2人の親子の様子はとても微笑ましい。
「では、よろしくお願いいたします。」
そう言って彼女と挨拶を交わしその場所を後にする。
「よし、ミーナちゃんまず後ろの列車から探そう!」
「うん!」
「ちょ、セシル。一応車内クルーに…」
ピピピピピッ
手を繋いで歩き出す2人にまた制止をかけたレイチェルだが、鳴り響く携帯の音に口を噤んだ。
「どうしました、レイさん?」
「うっ、あーもうタイミング悪いわこの電話。…ごめん仕事の電話みたいだから、あたしは行けない。セシルだけで行ける?」
画面を見ると顔を顰めた。
「はい!部屋で待ってくださいね。」
「…はい、レイチェルですが…」
セシリアへの返答は電話に出ながら頷いてジェスチャーで伝える。
「ミーナちゃん、ウサギさんはどんな色ですか?」
「真っ白!」
2人はレイチェルを残し歩き出し、特徴を聞きつつ安心させるように話しかけていく。
食堂車のドアへと近づくと、シュッと扉が開き出てきた女性とぶつかりそうになった。
「…失礼、急いでいて。ごめんなさいね。」
「いえこちらこそ。」
謝罪した相手は室内なのに帽子とサングラスを被っていた為、セシリアは自然と視線を去っていく女性に向けた。
…わあ、綺麗な銀髪。あ、ポシェットに帽子被ってるってことは降りるのかな。
確か、もうすぐ停車駅だし。
「お姉さん、早く〜!」
「あ、はーい。」
少女に急かされて綺麗な女性から目を逸らし食堂へと入って行った。
セシリアは探すことを"探偵ごっこ"と名付けて少女が出来るだけ不安がらないように気遣った。
こういうところは彼女の得意分野である。
2人は約束の1時間ほど車内の後ろから、聞き込み調査まで真似て探して行った。
「なかなか難しいね〜」
「うん、でも見つけたいな。あれね、お父さんがくれたの。お仕事で旅行にいっしょに行けないからお父さんの代わりだよって。」
セシリアは少女が絶対見つけたいという理由をようやく知った。
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