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「今度さ、凶悪殺人犯の名前でやってみないか?」川田さんは提案した。
「いいね」友人は食いついていた。
川田さんはさっそくネットで事件を検索した。ほとんどの凶悪犯は逮捕されて死刑判決を受けているため、ファミレスでドリンクバーなんて飲んでいる場合ではなかったが、少年事件は別だった。少年法に守られて、今もどこかで周囲を気にしながら息をひそめて生活しているのだ。
そんな中、本名をネットで暴露されている元少年がいた。元少年の同級生が正義感に駆られ、名前をブログに公表したのが始まりだった。あまりの反響の大きさに同級生は怖くなり、すぐに名前を消したが、瞬く間に拡散していったのである。
「あ、この名前なら知ってる。話題になってたわ」川田さんは膝を叩いた。「これで行こう」
友人は反対した。ニュースで扱われたことのある、誰もが知っている凶悪犯の方が反応を楽しめるからと主張した。しかし川田さんは譲らなかった。
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